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~障害受容と車いす歴史オタクの誕生~

~障害受容と車いす歴史オタクの誕生~

鶴﨑彩乃



 このタイトルを見て「えー。全然関係ないやん。」と思われた方がいると思う。その時点で、私は、勝ったなと思うのだ。何にとかではないが。

「障害受容」の考え方は、本当に十人十色だと思う。文献もそうだが、その人の生活歴・生活環境やその人が障害当事者かそうではない人かによっても変わってくると私は、思うからだ。私にとっての「障害受容」とは、理解を納得に落とし込むことだと考える。その作業は、私にとって長く辛いものだった。さらに、私の場合は、障害受容の時期と思春期が重なったからだ。今考えると、障害自体も私のアイデンティティの1つだったからこそだと思う。しかし、それは今だからであって、当時はとてつもない大きな不安と得体の知れない恐怖とがごちゃまぜになって押しつぶされそうだった。その目に見えない「魔人」から救ってくれたものの1つが「日本史」だ。

 歴史オタク誕生のきっかけは、司馬遼太郎の国盗り物語だ。当時、中学生だった私は、本屋さんの匂いが好きで暇さえあれば通っていた。しかし、本を買ったとしても1冊は読み切れない。そういう子だった。そんなときに出会ったのが、国盗り物語だった。当時の私は、障害受容に頭も心も占領されていて、学校に行く心のゆとりすらなくしていた。そういった意味でも「障害受容の過程」は「魔人」だったのだ。そんなときに手に取った国盗り物語は、すごいスピードで私の世界を変えていった。国盗り物語は、全4巻。そのうちの2巻を本屋さんでの立ち読みで読み切ってしまった。あ。立てないから座り読みだな。で。本を読んでいる間は障害受容なんてどこかに行っていて没頭できた。本にではないと思う。本に出でくる登場人物にだ。それが証拠に、国盗り物語の登場人物の中に斎藤道三の正妻的な立ち位置でお万阿という人がいる。本当は正妻ではないのだが、解説しているとコラムが終わってしまうので、割愛する。そのお万阿さんに心を奪われすぎて、その役をドラマで演じていた高島礼子さんにファンレターを書き、母からしばらくネタにされ、いろんな人の爆笑をかっさらったものだ。ファンレターを書いたのは人生でそのとき1回きりだ。ま。とにもかくにもそうやって心の「逃げ場」を見つけた私は、「障害」と向き合うため中学3年生のとき、1年間のリハビリ入院をする。そのときも「燃えよ剣」・「竜馬がゆく」・「功名が辻」を1年かけて読みあさった。当時、歴史という逃げ場がなかったら、私の精神は崩壊していた。

 そんな中学校3年生のときに歴史オタクとしての転機がやってくる。本で現実逃避することを基本とするインドア派だったのだが、2人の女神がきっかけで徐々に現地に行きたいアクティブ派になっていくのだ。1人目の女神様は、その当時のヘルパーさんで彼女がいなければ、障害受容の過程のときに私は死んでいただろうと確信している。そんな彼女に関ヶ原に行こうと誘われたのだ。行かない理由はない。実際、すごく楽しかった。「三成はここにいたのかな。家康は、ここで作戦会議してたのかな。」とか妄想し放題で、匂いとか質感とかを感じることができた。それを体験することで本だけでは得られない新たな充足感を得ることができた。この一件で、アクティブ派歴史オタクへの道へ進んでいくのだ。

 もう1人の女神様は、木戸孝允の末裔の親族の方だ。リハビリ入院が終わりを迎えようとしていたころ、頑張ったご褒美も兼ねて山口県・萩に母と私、幼なじみの3人で旅行に行くことになった。萩は維新の町。大阪に戻る前に町を散策していたら木戸孝允の生家があって、お庭は車いすでも行けそうだったのでお庭から建物を少しだけのぞくことにした。そうすると、品のいい女性が出てこられて私達に「あ。ちょっと。」と声をかけた。私達は、怒られると思った。歴史的な建物に車いすのタイヤ痕なんてあってはならないことだ。「お庭もまずかったですか。ごめんなさい。」そう言って立ち去ろうとしたら、女性は、笑って「いいえ。違うの。もしお時間あるんだったら中も見て行かれないかしら?」と言われたのだ。私は耳を疑った。「タイヤも拭かなくていいわ。どうぞ。いらっしゃい。」と言いながらスルスルと中に入れてくれた。女神だろ。この人。と思いながら呆気にとられていたら、展示品について事細かに説明してくれた。とてもユーモアのある方で、「柱もさわっちゃいなさい。」というお言葉に甘えたり、とても貴重で楽しい時間だった。いつか、お礼が言いたい。

 このことで気づいたことがある。それは、したいことがあったらとりあえず、口に出してみること。自分の予想だけで事の顛末を判断しないこと。萩にいた女神さまの教えだ。約10年後、この女神様の教えが新しい奇跡を生むことになるのだが、そのお話は次回にしよう。今日は、もうおしまい。 



【プロフィール】 鶴﨑彩乃(つるさきあやの) 障害名:脳性麻痺(先天性=生まれつき)、神戸学院大学 総合リハビリテーション学部社会リハビリテーション学科 卒業生、精神保健福祉士・社会福祉士 資格所有、大阪で一人暮らし 6年目、趣味 お城めぐり (目標 現存十二城制覇)