ITの進歩による可能性

吉次まり



すみません!電話貸してください!
鉄腕アトムが発したコトバです。みなさん知っていますか?
手塚治虫さんの描いたアニメキャラクターなので有名かもしれませんね。
まだ日本には電話があるかないかくらいの時代に、手塚治虫さんは鉄腕アトムという意志を持つロボットを考え、高速道路や高層ビルを考えました。その想像力は素晴らしいですよね。

今では高速道路や高層ビルは当たり前で、人工知能の開発も進み、アトムの様な自分の意志を持って動くロボットが出歩くのも夢ではないのかもしれません。そんな先見の目があった手塚治虫さんでさえ、電話だけは固定電話を描いていましたが、今では電話線のない持ち運び自由な電話、そう携帯電話があっという間に普及しました。
夢に描く様な世界が日に日に現実になってきています。

近年の技術の進歩は目まぐるしいものがあると思います。
私は平成生まれでまだ30年ちょっとしか生きていませんが、その間でさえ、パソコンが普及し、携帯電話が普及し、家電も遠隔で操作できる様になりました。また、パソコンや携帯電話に関しては、一人1台は当たり前で、一人で複数台を駆使し、機械がないと生活できないほどになりました。さらに、以前は文字入力だけで、パソコンと同じサイズの機械でしたが、より機能が詰まって、手のひらサイズになりました。
聞けば計算機でさえ、昔は一部屋ほどを埋め尽くしてしまうくらいの大きな機械だったとか。

ITの進歩はとても素晴らしいと思います。それは人の可能性を無限大に広げるツールになりえるからです。
車椅子でも寝たきりでも言葉が話せなくても、ITの力で世界が広がります。
私の場合は、骨が弱く重たい本や大きな新聞を手に取ることができません。
黒電話や公衆電話も重たくて使用できません。
しかしスマートフォンやタブレットを手にするようになり、電話をし、ゲームをして、好きな音楽を聴き、本を読み、映画を見て、世界のことも簡単に調べることができるようになりました。
そしてお家にいながら世界の人と繋がることができます。
小学生の頃は、流行っていたマンガを読みたくても、流行りの小説を読みたくても、本を持つことが出来なかったため読むことができず、話題についていくことができませんでした。
車椅子だからという理由で学習塾に通えなかったこともあります。
病気や様々な理由からお家から出られず、何もすることができない、できないと思って退屈な生活を余儀なくされている方も多かったと思います。
しかし近年のITの進歩で今までは身体が動かないことを理由に諦めていたことが、目や指など身体の一部分さえ動くことができたら、どこにいてもどのような身体的・環境的状態でも、自分の意思を伝え、やりたいことが人の手を借りなくても一人でできるようになりました。

いま現在、世界中に流行っている新型コロナウイルス。
人から人への感染力が強いために、手洗いうがいだけではなく、できる限りの外出自粛を求められています。
そこで在宅勤務や自宅学習が進められおり、ICTの発達によりそれが可能になりました。
パソコンやスマートフォンさえあれば、テレビ会議を行い、授業を受け、読書をする。
データのやりとりも、家で行えるようになりました。
しかし、家での作業がなかなか手につかない人もいるのではないでしょうか。そして、気分が沈んでいる人もいませんか。
日本は特に在宅ワークや在宅での学習が進んでいないと言われていますが、なぜどこにいても人と繋がることができるようになったのに、対面の文化が消えないのでしょうか? あくまでも一個人の見解ですが、これは対面の方が自分の存在価値を確認できるからなのではないでしょうか?そして帰属意識や参画意識を持つことができるからなのではないでしょうか?

オリィ研究所に勤めていた、番田さんは直接の面識はありませんでしたが、共通の知人がいるので、密かなファンでした。
その後、オリィ研究所の吉藤さんのnote(Blogのようなもの)には、こんなことが書いたあり、とても印象的でした。

OriHimeが目指したのは情報の伝達ツールではなく、存在の伝達ツールだ。番田と共に、番田が最も働きやすいようにOriHimeを開発し、”一緒にいるという状況、一緒に何かをするという状態”を作った事で「自分がチームで役に立ってる。役割がある」という感覚をもてるようになり、帰属意識をもつ事ができるようになった。
https://note.com/ory/n/n19258c76d1fa より



ここにも書いているよう、学校や仕事場に顔を出すということは、リアルタイムで人と話すことができ、自分がその組織・コミュニティの一員なんだと実感しやすくなります。 そしてその中で一緒に作業をすることで、役割意識を持つことができ、自分の存在価値を持てるようになります。
自己肯定感、つまり自信が付けばより「もっとこうしたい!」という挑戦する気持ちも芽生えより自信が着く。
組織に直接顔を出していれば、これらが容易になると思うのですが、在宅というのは自分一人で人の行動が見えにくい、そして些細な会話をしにくくなります。
そうすると、タスク(やること)だけはできても、自分がなぜやっていて、それがどう影響するのか、みんなはどう受けとっているのか、私は必要な存在なのか…が見えなくなるのではないでしょうか?
もちろん日本の「ハンコを押す」という文化や、「仕事は通勤してこそ仕事だ」という文化も大きな要因ではあると思いますが、円滑なコミュニケーションと自身の存在価値というものが課題となり、なかなか在宅というものが進まないのではと思います。

しかし、新型コロナウイルスに限らず、普段から容易に家を出ることが難しい環境の人は実はたくさんいます。
障害や病気・家庭環境などもあります。
そのような方々は「働く(学習する)能力がない」ではなく「働く(学習する)環境がない」だけなのです。
今回をきっかけに、ITがより進歩し、工夫しだいでどこにいても希望は叶えられるということが広がり、より環境や仕組みが整い、より多くの人の学習環境や就業環境が整い活動の場が広がることを切に願います。

【筆者プロフィール】 吉次まり(よしつぐまり) 平成1年3月生まれ あの昭和63・64年・平成1年という奇跡の学年 骨形成不全症 1種1級 全介助 スウェーデン製の電動車椅子ユーザー。その会社のモデルも務める。 中学・高校は国立附属の特別支援学校に行くが、幼稚園・小学校・大学は普通校に通う。 大学卒業後、大手外資系にて8年半勤めるが、次第に背伸びをせず自分らしく生きたいと思い、勇気を出して退職。令和2年3月から土屋訪問介護の社員として働く。 趣味はアーティストのイベント参加と国内外旅行。パソコンや携帯などが好きすぎて家電量販店には何時間でも居られるほど。 買い替えをお考えの際はぜひお声がけ下さい! ユースタイルラボラトリー社員。




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