よいヘルパー5

よいヘルパー5

菅野真由美(埼玉エリア サービスマネージャー)




よいヘルパーとは、何だろうと改めて考えてみました。

何をもって良いのか、何をもって悪いのか。まず私自身がよいヘルパーだったのかと。

未経験で入社した私は現場でおこる「良い事」と「悪い事」の区別がわからずサービス提供範囲を超えない要望はすべて「素直にやる」スタイルでした。介護経験のない私にとって、一見わがままとも思える利用者の要望も、重度訪問介護とはそういうものなんだ、と受け止めていたからです。

では利用者にとって何でもいう事を聞いてくれる献身的なヘルパーだったのかと聞かれると、決してそうでは無かったと思います。

入社して間もない頃、たまたま入っていた現場に往診の先生が来ていて、帰り際に当時のコーディネーターが先生に相談されていました。利用者が医療スタッフには信頼をおいていてナースの指示や指摘を素直に聞くのに、我々ヘルパーにはどこか見下した対応をされる、どうしたらよいか、といった内容でした。

いつも穏やかでニコニコして冗談を言うキャラクターの先生が、とても真面目な顔つきになり次のように話してくれました。

「我々医療従事者も自分の仕事をするだけ。相手がどんな態度や対応をしようとも、その時にやるべき事をやるだけ。そこには個人的な感情は必要ない。介助者の方も自らの仕事を守ればいい。相手の機嫌や状況にまどわされず、その時に介助者としてやるべき事をやるでいいと思う。利用者は体調や状況の変化で日による感情のふり幅が大きい。そこにいちいちこちらの感情を合わせていたら仕事として成り立たない。あなた達も仕事で入る以上、ある程度の割り切りと、仕事に対する誇りとプライドをもって臨めばいいと思う。」そんなような内容だったのを記憶しています。

一個人の医師の考えだったかもしれませんが、当時の私にはストンとおちてきて、それを土台に今日に至っております。

友人でもなく、家族でもなく、ボランティアでもない、仕事として入るとはどういう事なのか。

やる事はやる、でもやりすぎない。信頼は築く、でも常に一定の距離はおく。話はとことん聴く、でも情は移さない。

模索しながらも私はそのスタイルで仕事をする事で、結果どこの現場もNGを出さず、そして自分の心も守ってきました。

話が少しそれてしまいましたが、利用者にとってよいヘルパーとは、怒った顔で仕事する人より多少の失敗をしてもニコニコ気持ちよく接してくれる人ではないかなと思います。それにはヘルパーが自ら心を守れないと難しいでしょう。

現場で時々すごいなと思う神ヘルパーに遭遇します。その方は利用者が機嫌悪くても変わらず普通に接しています。決して過剰にも反応せず、機嫌もとろうともせず、あくまで普通です。相手が求めたときは近寄り、求めてないときは一定の距離をおく、良かれと思って動くなど絶対にしません。ですがそこにはピリピリした険悪な空気はなく、普通の空気が流れています。

そういう方はやはり利用者からの信頼も厚く人気があります。

何度となくそんな状況を体験すると、もしかしてピリピリした険悪な空気にしてしまっているのはヘルパーなのかなとも思えます。勿論きっかけは利用者の態度や言動ですが、こちらが過剰に反応しておどおどしたり、へり下ったり、むっとした開き直りの態度をみせたりすることで、険悪な空気を助長させてしまっているのかもしれません。

技術に対して向上心のある方はもちろんですが、それよりも「やさしさ」と「ドライ」という相反するものを持ち合わせ、それをうまく操作でき、過剰に反応しない良い加減の鈍感力をもって「普通」を保てる方はよいヘルパーとなっていくように思います。



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