「ケアハラスメント防止宣言」を読んで(公募コンクール入選作品2)

「ケアハラスメント防止宣言」を読んで(公募コンクール入選作品2)

川邉 会美  (大阪ケアスタッフ)



「ケアワーカに対する暴力の廃絶を…」文末の最後を締めくくる一文、この文面に対し私は、両者ともに虐待はあってはならないけれど、どの段階にあっても廃退してしまった時期には、「抑制」と「教養」が必要だと思います。

日本の高齢者人口は、今後2025年問題として75歳以上の人口が3657万人、2040年問題では3878万人に達し、その後高齢者人口は減少に転じますが、日本の障がい者総人口は936万人います。
 高齢者人口が減少に転じても65歳到達人口が、出生数を下回ることはないので、高齢者・障がい者率は増加を続け、来年2020年に20歳を迎える大人たちが、60歳に到達する2060年頃には障がい・高齢者率は、国民総人口のほぼ50%程まで達し、約2人に1人が65歳以上の高齢者・障がい者となる社会が到来するといわれています。

 そうなると、仕事や子育てをしながら在宅で介護をしなければならない中高年者も今よりも一層増えるのは確かなことで、どの年代の方にも介護技術や知識、障がい者や認知症高齢者の理解というのは必要不可欠となります。

 ケアハラスメントには、社会的文化的性差(ジェンダーバイアス)が深くかかわっています。昨年の、国際フォーラムでのジェンダーギャップ指数140か国中、日本は110位でした。日本文化には古き良き文化もあるのですが、古き悪しき文化も根強く残っており、このジェンダーバイアスが、ケアワーカーの過小評価に繋がったり、家事や子育て介護は、有償労働なのか?無償労働なのか?全て女性が背負わなければならないのか?という男女不平等な役割分業の問題が出てきます。

福祉や介護の分業では、家事・子育て・介護において、女性がする仕事だというバイアスがないのです、家庭で行われるほぼ無償労働に「報酬」と「ありがとう」という感謝のお言葉までついてきます。特に女性はやりがいを持って働けるお仕事だと思います。

介護に従事する職員は、きちんと研修や講習を受けて、実技や筆記テストに合格し、初任者研修・実務者研修・介護福祉士(国家資格)と知識と技術を身に付けている職員が沢山おられます。昔では無資格で働くことができていましたが、今では、研修やレポートの提出が必須である企業も多いです。介護職員が行う医療的ケアの範囲も増えました。絶対に過小評価されるべき職種ではないと断言できます。このケアをする側と受ける側のハラスメントや虐待の関係性は、施設や病院などの、医療・介護従事者と利用者、家族間でも同じような問題が発生します。

ハラスメントとは、様々な場面での「いやがらせ」「相手を不快にさせる言動や行動」「他者に対する発言・行動等、当人の意図とは関係なく相手を不快にさせたり尊厳を傷付けたり不利益を与えたり、脅威を与えることである。」エスカレートすると、虐待となってしまうので、危ないと気づいたら自分で対策を考え行動に移すか、あるいは然るべき相談機関に相談し、対策を取らなければならいし、被害者意識を持ちすぎても相手の思うつぼにはまってしまうので、気を付けた方が良いと私は思います。
 
社会保障制度・医療・介護技術や教育の整っている国では、社会的ケアを受けることができます。最近、どの分野のケア現場でも重要視されているのが、スタッフや利用者様の精神(心理)的ケアや、ハラスメント相談窓口です。
現在、福祉や医療現場で守られなければならないホームの中でハラスメントが起こっているという実態があります。
このことに関して、問題解決へ向かうには、教育や研修を行い続け理解してもらい尊厳が守られるよう虐待やハラスメントを阻止し続けていくしかないと思います。

介護経験として老人福祉施設で、トータル8年間の経験を経て人権擁護や虐待防止について実際に委員会に所属し、事故・虐待防止のために言葉遣いや、介護技術の確認や改善のための会議や、指導の役割をさせて頂いていた時もあったのですが、1つの事業所で100人に対して個別に満足のいくケアを提供できるか、といえば、それは難しいですが、常にセラピストや看護師が滞在しているので、安心や安全が確保されると思いますし、コミュニケーションを増やしたり、言葉がけを工夫することは可能です。

訪問介護では、訪問回数を重ね利用者様に寄り添って、ケア内容を改善していくことで、利用者様の笑顔や会話が増えたりと良い変化が見られるときもあります。訪問に限らず施設介護でも同じですが、喜びを感じられる瞬間であることを実感しています。

話は戻りますが、ジェンダー(社会的文化的性差)について、このバイアスは、時代やその人の生きてきた環境によっても、尺度に違いがあると思います。私個人としては、このジェンダーバイアスのおかげでかなりの不利を受けてきた中の一人です。幼少期からわんぱくで、小・中・高とバリバリの体育会系の教育を受けて、禁止令とトークンは褒め言葉や賞状、順位という評価。常に競争や対立関係でそこそこの身体能力があれば、競争相手は更に上の相手となり、対立や比較相手が男性になることもあり、個人やチームが強くなることに全力を尽くさなければならない、青春時代はそんな日々を送っていました。
 
指導者や親から、現状で満足するな(喜ぶな)、色気づくな(女性であるな)、負けるな(泣くな)、男勝りで強くあらなければならない、完璧を目指さなければならない、というハンドルを握って生きてきたように思います。(現在はだいぶペースを落として生活できるようになりました。)そのおかげで、「女性らしくない」、「色気がない」、「スカートなんかはかない」、「髪は短め」、「貧乳」(笑)、家事や育児は好きな方です、料理は得意ではありませんが作るのは好きです。
しかし、古き悪しきジェンダーバイアスのおかげで、女性らしくない(見た目が男っぽい)、気が強い、子供に対してのしつけが厳しすぎる、管理されすぎて嫌(食事・金銭面)など、おそらく男性受けしません。
(ケアハラスメント防止宣言とは、全く関係ない話なのですが私は女性らしく育つようには育てられていないのです、実際に男性利用者様には、「乳がない」とか、「お前男やろ」などとお声かけいただくことが多々あります!!)

これが本来の私なので変わりようがありません。女性らしく化粧をしたり、着飾ることも必要なのかと女子力UPを試みたりしてもすぐに嫌気がさしてしまいます。こんな女性がいることも知って、その他の改正された制度も受容して頂き、ぜひともジェンダーバイアスを除去して頂きたいと思います。

ハラスメント防止宣言や理念をもとに、インクルージョンに着目し、人手不足解消の他ICT化の確立した企業となり、多種多様な(人種・宗教・価値観・性別・障がい者・ライフスタイル)を認め合い、その個人の持っている能力や良い面を発揮してもらい、就労による経済的自立ができ、健康で豊かな生活を送るための時間が確保できて、自分や家族に合わせた生活スタイルに合わせた働き方ができる企業であり、仕事仲間や家族という「富」を失うことなく支えあっていける。ケアされる側とケアする側の尊厳が保障される。そんな幸福の輪が広がるよう貢献していきたいと思います。


川邉 会美   プロフィール 

  1980年9月23日生まれ
華頂短期大学 生活学科 生活科学学部 卒業
(職歴)学生時代は、歯科助手・ケーキ販売・百貨店での短期バイト。高校の時、福祉の仕事に興味を持ち、当時の特別養護老人ホームへボランティア参加をきっかけに、短大でヘルパー2級を取得後、20歳から老人介護保険施設で2年弱働き一度退職。なぜか興味が美容関係に傾き美容やダイエットにのめり込みエステ企業に就職するが、高額なコースや商品を売らなければならない、自分の症に全く合っていないことに気づき退職。耳鼻咽喉科の診療補助を3年弱経験させて頂く。その後出産を機に、子育て中でも時間の融通が利きやすい食品製造工場で2年パート勤務。
正社員での社会復帰を期に、介護業界へ戻り、介護老人福祉施設へ入社6年勤務後退職。
今年H31年3月から(株)ユースタイルラボラトリー 土屋介護訪問事業所へ入社。H27 介護福祉士取得。


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