同じ過ちは繰り返さない

吉田ひとみ

私は介護職の経験しか無く、今年で12年目を迎えます。以前勤めていた特養で何度もご利用者様の最期を看取ることがありました。
ターミナルケアでご家族やスタッフに看取られる方、急変で突然命を落とす方。高齢者の方々の介護をしてきた中で、たくさんのご利用者様の死に直面しました。

その中で、私には後悔してもしきれないことがひとつだけあります。

それは2年目の時でした。私が働いていた特養では、1ユニット24人程のご利用者様がいて、平均の要介護度は4.2なかなかの重労働です。
そんな私も2年目となると、少しずつケアというところで排泄介助や体位交換など、技術的な仕事にも慣れ、自分に自信と余裕が出来たんだと思います。
今思えば、もしかすると余裕ではなく甘く見ていたのかもしれません。

夜勤は16時間の長丁場でした。0時から2時間の休憩を挟み、休憩前に必ず巡回と体位交換を行います。
私が休憩明けに巡回をしていると、一人のおばあちゃんがうつ伏せになっていました。
身体は冷たく、顔が潰れ、、あの時は気が動転してどのように対応したかはあまり覚えていません、、
多少手は動く方でしたが、一人で身体を動かせる状態ではなく、咄嗟に私が殺してしまったんだなと思いました。
体位交換を真横にし過ぎてそのままうつ伏せになってしまった?うつ伏せのまま呼吸が出来ずどんなに苦しかった?いつからそうなった?体位交換した直後?なんで気付けなかった?
ずっとこんなことを繰り返し考えていたように思います、、というより未だに考えます。

その日の明け方には警察も介入し、ご家族も直ぐに駆けつけてくださいました。
死因は不明で、警察はご家族に司法解剖を勧めたそうです。
ですが、ご家族はそれを拒みました。その後に、息子様から言われた言葉は、『今まで母のお世話をしてくださりありがとうございました。こうして母が長生き出来たのはみなさんのおかげです。』

真相は分かりません。分からないにも関わらず、このような言葉をかけてくれました。
この言葉を聞いて、私は涙が止まりませんでした。胸が張り裂けそうで、痛くて痛くて、そして自分がとっても不甲斐なくて、、自分が情けなくて堪りませんでした。

この一件がありましたが、介護の仕事を辞めようとは思いませんでした。自分に科せられたことは辞めることではなく、この経験を持って、同じ過ちを繰り返さないこと。当たり前の話ですが、、
私たちは医療職ではないので、やれることに限界があるとは思ってます。
ですが、ご利用者様の命を預かっていることはまぎれもない事実です。一つ一つの命に向き合う覚悟が必要だと思います。

こうして改めて振り返ると、生きているとこんなにも辛いことってあるもんなんだなと、何故か他人事のように思ったりもします。
人生何が起きるか分かりません、、
ただ、このようなことがあっても生きることを辞められないのは、辛いこと以上に生きることに対して、素晴らしさを実感しているからなんだと思います。

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