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地域生活を支える介護者との人間関係②~ベテラン介護者~

地域生活を支える介護者との人間関係②~ベテラン介護者~

渡邉由美子



前回の文章で、新人介護者との関係性について述べてきました。今回は、ベテラン介護者との関係性を、少し突っ込んで、掘り下げながら書いていこうと思います。

家族でもない、友達でもない私の介護を、仕事として行っている関係性が、一定以上に深くなっていくと何が起こるかというと、ある意味お互い求めすぎてしまって、人間関係の収拾が付けにくくなります。

例えば、本来はよくない事ですが、冷蔵庫の中身は本人よりこの介護者の方がよく把握している、家のどこに何があるかも知っている、曜日によって・行く場所によって、持ち物が違ったり服装が違ったりすることを分かっていて、先回り介護がお節介ではなく、そうして欲しかったと思うタイミングや感覚で出来るなどなど。身体介護に至っては、ミリ単位のお尻の位置の違いで手が動かせるとか動かせないことを、本人が言わなくても微調整することが出来るようになり、脳性麻痺特有の身体の強張りや痛みの加減も分かるようになり、その上で、「今日は強く引っ張るように介護した方がいい?」とか「今日のやり方はソフトにした方が身体は動かせる?」と体調も加味したサービスを提供出来るように、自然となります。私が伝えようとする頃には、「そうだと思って、もうそれやってあります」と言ってもらえる感じの『スーパーデキる介護者』になっているのです。

ここまで書くと、一見いいこと尽くめのように一瞬思うのですが、そうでもないのが介護者との人間関係の本当に難しいところです。

介護者は、「自分が出来ているのに他の介護者はなんで出来ていないのか」ということに苛立ちを感じるようになり、私は私で、何でも分かっている、言わなくても出来るなら、痒いところに手が届くかの如くおまかせして、楽な生活をしたいと無意識のうちに望み、それが叶わないと「こんなに長く介護をしているのになんでやってくれないんだ」という、お門違いの感情を抱くようになってしまいます。その感情のぶつかり合いがエスカレートすると、お互いの嫌なところばかりが目に付くようになり、重度訪問介護は長時間生活を共にするような介護の形態ゆえに、介護保険のように感情的なものを出す暇も無くやることだけやって次の現場へ行く、というわけにもいかない性質上、関係性が煮詰まって、にっちもさっちもいかない状況となってしまいます。そうなると、口もききたくないという状況の中で、お互い無言で介護行為だけが淡々とこなされていき、夜寝るでも朝起きるでも日中の活動中も、挨拶も無く、優秀な介護ロボットが私の傍にいるような状況で、日常生活を送っていかなければなりません。

身体介護が上手くいかないより、このような状況の方がとてつもなくしんどいのです。コミュニケーションの良好さは、何にもまして介護を成り立たせる上で重要な要素だと、痛感しています。

特定の人に依存心が強くなると、「この人がいてくれたら私の生活は安泰だ!」と思い、介護者の方も、最初の内は期待に応えたい、この人の介護にたくさん入れば収入もある程度計算できるし、生活が安定すると考えて、折からの人材不足が根本にあり、一石二鳥と思うのですが、それが気付けば共依存関係となり、抜け出せなくなる状況を、いつの間にか作り出しているのです。部屋に流れる空気が重くなることから始まり、介護者と私だけではその関係を修復することが難しいと感じてしまうほどの関係性となっていくのです。

心理学でもよく言われるように、距離感や密度はとても大切だと、痛切に思う経験となりました。他人介護を受けている限り、遅かれ早かれ、いつかは様々な理由で私の介護を離れなければならない時が来ます。時間数や曜日を、一人の介護者がたくさん枠として持っているということは、辞める時のリスクもとても高くなるということです。人探しは大変ですが、適度に風通し良く分散して、そんなに優れている部分は無くてもまあまあなんとか生活は続けていけそうだ、と思えるぐらいの状況が、一番継続性があって良いと、このごろつくづく思います。

煌めきのある介護は、とても心地が良いですが、自立生活という根本観点から言っても、介護者に依存するのは違うので、強く依存したいと思わない程度の人間関係を構築し続けていきたいと思います。人にはみんな得意不得意があって当然と分かっていながら、全てを求めてしまうこととの葛藤の日々です。とにかく、もっと介護人材が増えれば、一人の人に過剰な負担をかける事は減っていくので、そこの秘策を何とか考えたいと、切に望んでいる一人です。

これを読んでくださっている読者の皆さん。人材募集の良い方法があったら教えてほしいと思います。家族や恋人同士でも上手くいかなくなることがあるのですから、介護という関係性はチームワークで乗り切れるようにするのが、多分一番大切なことなのだと思います。細く長く介護を受けながら、地域で生き続けていきたいと思っているのですから……。



渡邉由美子
1968年6月13日生まれ 51歳
千葉県習志野市出身
2000年より東京都台東区在住
重度訪問介護のヘルパーをフル活用して地域での一人暮らし19年目を迎える。
現在は、様々な地域で暮らすための自立生活運動と並行して、ユースタイルカレッジでの実技演習を担当している。