自分が自分を大事にすること~「ママは身長100cm」を綴って~

自分が自分を大事にすること~「ママは身長100cm」を綴って~

伊是名夏子



身長100㎝、体重20㎏、超小型ママの私は6歳と4歳の子育てをしています。骨形成不全症という骨が折れやすい障害があり、電動車椅子に乗っています。右耳が聞こえず、左耳は補聴器をしています。

そんな私はまわりから褒められたり、驚かれることがたくさんです。例えばひとりで電車に乗っているだけでも「お出かけするなんて偉いわ!」と言われてしまいます。「電車に乗らないと、お出かけができないのって、普通のことじゃないのかな」と思うのですが。そして会話の流れで「私、6歳と4歳の子どもがいるんです」と言うと、とても驚かれます。驚かれ過ぎて、話が続かないくらいです。車椅子に乗っていても、お出かけもするし、恋をするし、子育てもします。でもまわりからは、障害者は何もできない、かわいそうというイメージが強いのでしょう。

もちろんできないことはたくさんあるので、ヘルパー制度を使いながら1日約10時間、ヘルパーに助けてもらいます。5kg以上の物は持てないので、あかちゃんが生後6か月を過ぎるころには抱っこもできなくなるし、ベビーカーだって押せないし、子どもがキッチンのガスコンロをさわろうとしても「危ない!」と言ってさっと抱きかかえることができません。子どもがお茶をこぼしても、急いで雑巾を持ってきて床を拭き、子どもを着替えさせることもできません。

だから私なりのやり方で、毎日を乗り切ります。子どもも一緒にお出かけする時は、必ずヘルパーさんも一緒に。子どもも車椅子に乗ってもらい、ベビーカー代わりにお出掛け。キッチンはベビーゲートをして子どもは入れないようにして、子どもがお茶をこぼさないように家でもふた付きの水筒を使います。そうやって助けを求めながら、できないことを予想・工夫しながら、子育てします。

またヘルパーさんだけでなく、ボランティアさんや、近所の人、ママ友にも助けてもらいます。手を貸してくれる人も初めは戸惑うので、具体的に「こうやってほしいです」とお願いします。私が助けを求めることで、相手との会話がうまれ、意外にも相手が私に頼ってくることだってあるのです。信頼して頼ることで、相手からも必要とされるのです。

そして人に助けてもらうことが多い私は、困っている人がいることに気づきやすいのです。駅で困っている人を見つけたら、よく声を掛けます。ただし、白杖をついている方、もしくは外国人に対してがほとんどです。なぜ限定なのかというと、町中の人たちは、車椅子の私とはわざと目を合わせないようにしたり、距離を大げさに取って離れる人が、よくいるからです。でも見えない人と外国人は、車椅子の私を警戒しないことが多く、私も声を掛けやすいのです。電車に乗るサポートをしたり、道を案内したり、駅員さんにつないだりと、私でもできることはたくさんあります。

時には、私も、自分のことはすべて自分でしたい、人に頼むとかえってイライラすると思う時もあります。でも無理をしたら、骨がどんどん変形していくし、体の変形が進むと息もしづらくなるかもしれません。だからこそ、できることでも、疲れていたり、危ない時は、敢えて人を頼るようにします。「がんばりすぎないことをがんばる」がテーマです。

  ただ子どもたちは、待ったなし!いつでも、どこでも「ママがいい!ママやって!」のオンパレード。無理しないと決めていても、疲労困憊。イライラし、子どもをどなってしまうこともあります。

子どもたちはとにもかくにも私と一緒に車椅子に乗るのが大好き。「ママ狭いから、もっと寄ってよ」と言うくらいです。車椅子はママの物なのに、子どもたちは自分の物だと思い込んでいるみたい。だって子どもたちにとっては、車椅子のママが当たり前なのだから。すでに6歳と4歳の子どもは、私よりも身長が高く、家族の中で一番ちいさいのがママの私です。そんな我が家のカタチが、子育てのいろいろなカタチの一つとして広まってくれるといいな。

私は骨が弱くて、歩けない障害があるけれど、それ以外の女性として、母として、コラムニストとしての私もいます。人は誰でもいろんな面を持っています。カテゴリー分けするのが便利なときもあるし、傷つくこともあります。だからこそお互いを理解して、繋がって、支え合う仲間(アライ)がほしいです。

人は誰でも、できること、できないことあるし、その日の体調によっても変わります。障害のあるなしに関係なく、誰でも、休むことを大切にして、無理をしない生き方ができたらいいのに。

そのためには、まずは自分が自分を大事にして、十分に休むこと。自分に余裕があると、相手が休んだときに「怠けている」と非難することなく、「おたがいさま」と思えるでしょう。

そんなことを綴った「ママは身長100cm」。子育てだけでなく、私の骨折エピソード、恋バナ、性教育、夫婦別姓などいろいろなことにもふれました。



いまママをしている人だけなく、子どもがいない人や、シングルの人、10代の人、20代の人、子育てを終えた人、そして男性など、いろいろな人に読んでもらいたいです。だって私はママ友も好きだけど、自分とは違う状況にいる人も大好き!

同じ状況にいる人だと、お互いを比べちゃって、苦しくなってしまうことがあるけれど、状況が違うと、逆に自然体でいられたり、素直に相手をほめることができるからです。ちがうってすばらしい! ちがうからこそ、理解し合えるし、支え合えるのです。この本を通して、違うのっていいね、違うっておもしろいね、そう思ってもらえると嬉しいです。


【略歴】
著書「ママは身長100cm(ハフポストブックス)」。コラムニスト、1982年生。沖縄生まれ、沖縄育ち、神奈川県在住。東京新聞・中日新聞「障害者は四つ葉のクローバー」を連載中。 骨の弱い障害「骨形成不全症」で電動車いすを使用。身長100cm、体重20kgとコンパクト。右耳が聞こえない。6歳と4歳の子育てを、総勢15人のヘルパーやボランティアに支えながらこなす。 早稲田大学卒業、香川大学大学院修了。アメリカ、デンマークに留学。那覇市小学校英語指導員を経て結婚。 「助け合う」をテーマに16歳からの講演は100回以上。ファッションショーや舞台でも活躍中。 好きなことは、パンダ、体と環境にいいこと、性教育。



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