支えることを支える力について



私たちがする仕事は「支援」「介助」と呼ばれます。この言葉の意味を考えるとき、二者の間に、ある一方の意思にもう一方が手を添える、後押しをするという状況を思い浮かべると思います。誰かを助けたい、人の役に立ちたい、と思ってこの仕事を始められる方、始めようとお考えの方も多いでしょう。そのお気持ちももちろん大切だとは思いますが、実際に働いてみるとこの関係性は常に一方通行ではないということに気づきます。

昨今の介護職員初任者研修(旧:ヘルパー二級)の実技履修内容に盛り込まれている「ボディメカニクス」の概念などまさにその表れだといえます。端的にお話させていただくと、この概念は支援側が常に力技でよっこいしょよっこいしょとやっていては支援者・被支援者ともども疲弊するけれど、障害や病によって程度の差こそあれ、支援者の体と被支援者の体の構造は根本的に同じであって、重力や身体の構造、それに伴う身体の動きの傾向というものをしっかりわかってそれを利用すれば、歯を食いしばって力づくでやるのは褒められたことじゃないですよ。という概念です。

まさにこれこそご利用者が今そこに在ることと、ご利用者自体の力を介護において認めることから始めなさいということであり、「支援」という行為は、こちらが全て行うというのは傲慢であって、支援者と被支援者の二人の織りなす平衡(バランス)によって「支援」というものは成り立つと言えるでしょう。 ひとりの利用者が生きて在ること、このことこそが私たちを支援者と在らしめるのです。

また、失敗続きで落ち込むヘルパーに、ご利用者の方から、「焦らなくていいから、あなたができるだけ確実にやってください」と声をかけてもらうことがあります。制度的にはヘルパーは支える側としてその場に存在しますが、この瞬間、ご利用者の方が明らかにヘルパーを支えています。

まさにこういった境界線の曖昧な支え合いこそ“人の間”と書く「人間」の成り立つ瞬間ではないかと私は考えます。

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