今日この原稿を書いている日の午前中は季節外れの雪が降り、外は真冬に逆戻りな天候です。にもかかわらず、桜の花はちょうど満開を迎えています。例年であればお花見や歓送迎会、卒業式、入学式、新入社員の入社式など、なんとなく心華やぐ春の季節です。
しかし今年は様子が違います。7月に予定されていた東京オリンピック・パラリンピックの一年余りの延期が発表されて以来、自粛自粛ムード満載な状況となり、テレビをつければコロナの感染者が東京都で今日一日で何人増えた、重篤になって死亡した人が何人出たという情報を一日中報道しています。それは必要な情報であり、気を付けなければいけないのは改めて言うまでもありませんが、あまりそのような情報に浸っていると精神が暗くなり、免疫力は逆に下がってしまうのではないかと思うことも増えてきました。
以前書いた新型コロナウィルスの記事でも述べましたが、衛生用品は相変わらずどこにいっても手に入りません。同じ仲間の肢体不自由障がい者の中で医療的ケアを必要とする人たちは、日常的にアルコール消毒をして医療的ケアを受けなければ、新型コロナウィルスだけでなく普通の風邪やインフルエンザ、細菌性の感染症にかかりやすくなり、普通の生活の継続が難しくなってしまうのです。このような特定の理由のある人にいち早く国が買い上げたそれら必要物品が供給されるような動きを、なんとか障害者運動の一つとして展開したいものだと思います。健康な人とは違う事情があることを一般社会の人たちに知ってもらうことから始めたいと思います。ともすると、何でも障がい者は優先で、皆が困っている時に不公平だと受け取られる可能性もあるので、その辺りに誤解が生じない周知の仕方をしたいと考えています。
また、感染拡大防止に向けた外出自粛要請が大々的に行われた影響で、不要不急の外出を避けることが求められています。しかしその定義が曖昧で難しいという部分と、小池都知事から始まり近隣の各県の知事が自粛要請を一斉にかけたことから派生している問題なのですが、必要な外出までしてはいけないという機運がとても高まってしまっています。そしてその外出の自粛要請の中に、東京にはなるべく行かないで欲しいという強いメッセージも含まれてしまいました。
テレワークが推奨され、そのような行動をとること以外に、パンデミックやオーバーシュート、ロックダウンを招かない方法はないと断言された報道が激化しました。そのため東京に行くイコール新型コロナウィルス感染と定義づけられてしまい、さらに東京に行かないことが得策であると意識づけられました。したがって介護者の方たちも当然できる事なら東京に行っての仕事は今避けたいと思っているのが本音だと思います。
それ自体はこんなご時世が続いているのですから仕方がない側面と受け止めるほかありません。このまま収束の方向に一日も早く向かって欲しいと願うばかりです。でもそうはいかず、こんな風潮がどんどん加速していくと、我々のように重度の障がいを持ちながらの地域生活を営む者にとってあっという間に破綻をきたします。かといって、介護者たちに電車やバスに乗って一時間以上かけて来てもらうことが少なくない以上、新型コロナウィルスに感染するリスクは確実に高まるのも事実であります。なんとも言えない複雑な気持ちです。そのうち気持ちの問題と言っていられない、ロックダウンの状態となった時、頼れる家族がいないのでこれから先の生活がどうなっていくのか、とても不安でなりません。それは私だけではなく仲間みんなの問題なのです。
先日、介護事業所から感染拡大が身近で起こった場合、介護派遣をできない場合もありうるのでそれを予め了承して欲しいという趣旨のお手紙をいただきました。言われることはやむを得ないと思いつつも、そんなことになった時現実に生活をどうしたらよいのかと悩んでしまいました。そのような事態の起こった場合にはどんな暮らし方の手立てがあるのか、具体的に仲間や介護者と共に話し合っておく必要性を感じています。何か画期的な方法をここで提示できれば良いのですが、しばらく考えても名案は思い浮かばずに困っています。
そしてもう一つの側面として大きなものは経済対策です。実際に中国人観光客が激減し、外出自粛の煽りをもろに受けて消費が低迷して以降数か月が経ち、本当に経営が成り立たず倒産した企業もたくさんあるようです。この状況が長引けば長引くほど悪化の一途をたどることは目に見えています。具体的で本当に助かる施策を講じていただけることを望むばかりです。新型コロナウィルスとの闘いは長期戦ともいわれるようになりました。少しは上手く気分転換も図りながら、たくましくこの難局を乗り切る術を身につけたいと切に思います。気を緩めずに出来ることを継続して健康に気をつけながら、時には支えあい暮らしていきましょう。
渡邉由美子
1968年6月13日生まれ 51歳
千葉県習志野市出身
2000年より東京都台東区在住
重度訪問介護のヘルパーをフル活用して地域での一人暮らし19年目を迎える。
現在は、様々な地域で暮らすための自立生活運動と並行して、ユースタイルカレッジでの実技演習を担当している。