先日、私は区で行われている健康診断に行ってきました。そこで感じた医療の難しさについて記していこうと思います。
まず、血液検査と尿検査を受けるのですが、私は障がいの特性上、手に力が入って曲がってしまうため、血液検査の採血がなかなかできず、数人の看護師さんとその時付き添っていた介護者も手伝って押さえつけるようにして一番細い針で吸い上げるようにやっと針を刺し、必要な量をとるという状況でした。次の尿検査でも普段の排泄作業とは異なる排泄が求められました。通常介護者が一人の時は車椅子上で差し込み便器をおしりの下に入れ込んで排泄作業をするのですが、雑菌や異物が混入すると正しい検査結果が得られないとのことで、トイレに移乗して紙コップに上手く命中させて尿を取らなければならないとのことでした。
移乗するにももう一人看護師さんに手伝ってもらえないと一人で抱えてトイレに移すことは今はもう不可能なので、看護師さんにお願いしましたが、人員に余裕がないという事でトイレの前で30分以上待たされ、来てくれた方も「急いで、急いで」という掛け声のもとにやってきて私が介護方法を説明しているにもかかわらず、病院の入院患者によくやる介護者の足と足の間に私の足をいれて密着させ、一気にトイレまで運ぶというやり方を取られ、股関節の開かない私はその瞬間悲鳴をあげてしまいました。
一週間か十日間くらいその痛みが続き、そのことでまた別の病院に通わなければならないことになりました。肝心の採尿はこれまた私の股関節が開かないために、上手く紙コップに尿をとることができず、身体をうんと前かがみにして後ろから尿を取るという方法を試しましたがこぼれてしまったこともあり、必要な量ギリギリしかとることができませんでした。そのような状況で本当に正しい健康診断が下せるのかと心配になりました。
次は、心電図と身長・体重を測ります。これはベッド移乗の作業を必要とし、やり方の分からない人たちが4人も5人も集まってくるまで待った挙句に本当に意識のない重病人をベッドに移すときの方法で、よくテレビドラマのワンシーンに出てくる「いちにの さん」と大きな声で掛け声をかけてシーツに寝かせ、それをベッドに一気に運ぶという状況でやっとベッド移乗し、要件が終わるとまた人が集まるのを待って、その逆をしてもらい車椅子に戻り帰っていくみたいな、本当に病院に行くと一気に重病人が作り出される感満載の対応をされてしまうのです。
知らないのだからマニュアルにあるやり方をするのはやむを得ないことだと思います。介護者もついて行っているし、私も日常はこうして二人介護で移乗作業をしていると説明していますが、たくさんの患者様をいっぺんに見なければならない医療スタッフ、お医者さん、看護師さんには聞く耳を持ってもらえない現実がありました。
マンモグラフィーもやろうとしましたが、キャスター付きの背の高い背もたれも脇もなにもない丸い椅子に座るか、両脇から脇の下を持って立たせてもらわなければマンモグラフィーの検査はできないことが分かり、断念しました。
子宮頸がんや体がんの検診も受けたいと希望していましたが、これも椅子に座ると自動的に足が開く椅子に座らなければならないので、断念しました。
全身のどこを調べる時でも、唯一できる検査はMRIです。音に反応してしまい、全身の骨が折れているように映ってしまうので、鎮静の点滴を打って音への反応を鈍くして身体が落っこちないようにベルトで固定して行います。あとできるものはエコーといって、超音波を身体にあてて、内部に異常がないか調べる検査ぐらいしかありません。
私は決して医療従事者の方たちを対応が悪いと責めたいわけではなく、脳性麻痺という障がいの特性を広く様々な職業の人が知ってもらいたいのです。そうなることで、もっとよりよい医療が受けられると率直に感じます。医療と介護はいつも同列に並べられ、医療が提供できる人は介護もできる、と世間では思われていますが、介護と医療は似て非なるものという認識を両者が正しく持つことによって両方の質が上がり、ひいては入院時における介護者の受け入れがスムーズになると思います。
たとえ障がいにプラスして病気を抱えたり、年老いて医療依存度が高くなったりしたとしても入退院を繰り返しながら生きていける体制を作っていく事によって、地域で人生を全うできると確信しています。
そのためには、医療従事者をはじめ関係者に「入院時ヘルパー」という公的制度があって、一人一人に対して個別性の高い介護を提供できるヘルパーを入院しても日常生活の為に日常生活のためにつけることのできる制度があること、そしてその人たちによって医療事故を防ぐことが出来る、ということを知っていただきたいと切に思います。
障がい者もきちんとした医療を安心して受けられることによって元気でいられる寿命は伸ばすことができる時代になりました。クオリティーオブライフを追及して、よりよく地域で暮らせる応援団を常日頃から作っていきたいと考えています。