土屋人日記 2020年無礼の初出し

佐藤飛美




今年も年始は、兄姉集まって賑やかな時間を過ごすことが出来きた。
たった1日わずか6時間程度の短い時間だが、巣立った子供たちが実家に毎年集まり近況を報告し合う。我が家の大切な大切なイベントだ。

私は5人兄姉の末っ子育ち。
異母兄弟という、ちょっとだけ一般とは異なる絆で結ばれた私たち5人だが、幼少期は兄からも姉からも可愛がってもらい、そしてそれは今もって変わらず。
集まれば年甲斐もなく涙が出ちゃいそうなくらい大笑いし、神をも恐れぬオフザケ満載の仲良し5人兄姉だ。

父はもう他界したけれど、母も兄も姉も…
自由奔放な私をいつもここぞで支えてくれた大切な人達。

そんな年始の席で、今年は兄からとある質問が飛んできた。

介護の仕事に携わるにあたり、お前はどう思ってるの?
仕事では利用者の話に耳を傾け、笑顔で対応しているんだろ?
どうして自分の母親にはそうもそっけない態度をとるんだ?
そんなんでよく介護やれてるよな…

不穏だ。
これはもう完全に兄のお説教モードである。
数年前に、この同じテーマによって兄と怒鳴り合いの喧嘩になった記憶が蘇ってきた。

あの時の私は…
明日もし母が亡くなったとしても、私は後悔しない接し方をしている!
余計なお世話だ!!

と…
大声張り上げ啖呵を切ったわけだが、数年経って思う。
きっと後悔しかしないだろう。

落ち着け、落ち着け。
今年は喧嘩なんてしないぞと、自分に言い聞かせながら私の発した言葉がこれだ。

「この席は仕事じゃないからね」

そして答えた瞬間思う、きっと伝え方を間違えた。
しかし、一度口からこぼれ落ちた言葉の回収はできない。

なにか?!
お前は仕事じゃなければ笑顔ひとつ出さないってのか?!?!
兄の失望混じりの反応は当然である。

身内に対して仮面を被ったり、取り繕って接するのは逆に失礼なのではないかという持論を矢継ぎ早に展開してみるも、失墜した私の信用はもはや取り戻せそうになかった。

確かに、年に1度しか顔を出さない実家でのつれない態度。
母が可哀想かもしれない。

しかし私の中では既に、この宴が終り解散した後の事を考えたりしていたのだ。
毎年、帰り際に寂しがる母を思うと、あまりベタベタ過ごさない方が別れのインパクトが少ないのではないかと。
私なりの母との計算し尽くされた距離感のつもりだった。

もしこの日記を家族が読んだならば、第2ラウンドのゴングが鳴り響くと同時に、家族からの意義申立書が私のもとに続々と届くかもしれない。
こんなコラムで言い訳なぞ書いている暇があったら、一刻も早く母への態度を改めるべきだと。

私は今この日記を、自戒の念を込め書いている。
だからどうか今年の無礼を許して欲しい、来年は仕事でなくとも最高の笑顔を繰り出すと、ここで誓います。

日頃、仕事でも利用者や仲間との距離感については特に頭を悩ませているけれど、改めて他者との距離感について、そして正解について考えスタートを切った年始であった。

もちろん正解なんて無いのだろうが…
思考を止めず、2020年ステキな距離感習得に私は励もうと思う。


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