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介護のお仕事で困ったこと 必要な嘘

介護のお仕事で困ったこと  必要な嘘

山口裕幸



私は、現在、地域密着型通所介護、いわゆるデイサービスの介護スタッフとして、努めています。

重度訪問介護のような経管胃ろう、たん吸引といった難しい医療的行為に携わることはなく、文字盤を使った意思疎通をはかるといった難しさにぶつかることもなく、介護スタッフとして窮地に立たされるような困難のないまま、早十か月が経ちました。
とは申しましても、介護職に初めて携わる自分にとっては、全てが一から学ぶことばかりでしたので、先輩スタッフから教わったことを真似て、只管、吸収する毎日でした。その中で「基本を大切にすること、誤薬、誤嚥、転倒の事故が無いこと」を学ばせていただきました。

  少し、介護の仕事に慣れてきたころに、いつも笑顔でおられるご利用者様から「わたし、嘘つきは大嫌い」と、怖い顔つきで面と向かって言われました。全く心当たりのないことでしたが、「ごめんなさい」と言ってその場は終わりました。
しかし「嘘つき」という言葉が心に突き刺さって、しばらくの間、不安な思いを拭い去ることができませんでした。

  デイサービスには、何らかの病気がきっかけで手足に障害がある方や認知症の方など、様々な方がご利用になられています。
通所拒否があったり、入浴拒否、食事をとらない方、お薬を飲まれない方、施設内を歩き回られたり、帰宅願望で突然外に出られようとする方たちと一日を共有する、とても面白みのある介護サービスと思っています。
入浴介助の時に「お風呂に行きましょう」と言ったら100%断られる方もいらっしゃいます。その時には、「ちょっと見てもらいたいものがあるので」と、お風呂場まで誘導させていただいて、おもむろに入浴に誘導します。
帰宅願望のある方には、お話を聞かせていただきながら、それとなく話の方向をずらして、一緒にレクリエーションに参加していただきます。

  振り返って、よく考えてみれば嘘だらけの一日だったかもしれません。でも、その嘘は必ずご利用者様のため、その方にとって必要な嘘であると思います。
私は「嘘つきは大嫌い」と言ってくれた方を大好きです。今でも、時折、真意をついたことを言ってくださいます。
「偉そうになったらダメ」とか、その度にドキッとさせられます。そんな中で、最も大切なことは、お互いの信頼関係にあることを教えて頂きました。
ご利用者様は勿論、そのご家族の方との信頼関係があってこそ、「嘘」のような誘導にも応えていただけると思えるようになりました。
アルフレッド アドラーは、「(信頼とは)まずは自から愛すること」と言っておりましたが、困ったことに、これが最も困難なことかもしれません。「自ら愛する」を胸に、これからも努めていきたいと思います。


*山口裕幸のプロフィールはこちら